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相続税、要注意Vol.3 (2015-11-02)
【相続税「自宅・現金各5000万円」は要注意2】
【Q】田舎に住む親が持つ空き地や山は、相続した方がいいですか。
【A】収益が見込めない不動産は、親が元気なうちに売却の準備を進めましょう。
「ある地方都市に住む人の話では、駅の近くの土地なのになかなか買い手がつかず、待ちに待った末にようやく隣のお医者さんが駐車場にすると買ってくれたようです」と税理士・土田義二さんはしみじみ話す。親が持つ田舎の土地は、確実な収益性が見込みにくいため、自分が住むなど目的がない限りは早めに売却するのが無難のようだ。
■放っておくとトラブルも
土地を相続したまま放っておくと、不用物を不法投棄されたり、無断で火遊びに使われ事故を引き起こされたりするなどの恐れもある。「トラブルがあった際には土地の所有者が責任を問われるため、土地を持っていること自体がリスクになる」(土田さん)という。
田舎の土地に立派なビルを建て、賃貸経営を始める人も多い。だが、「調子がいいのは初めだけで、その後の空室や賃料引き下げで赤字は膨らむばかり……という失敗談もよく聞く」(土田さん)。都心に比べ田舎になるほど空室リスクが高まることを覚悟の上、10年、20年先の収益プランまで検討し、慎重に考える必要がありそうだ。
収益が見込めない土地は、親が元気なうちから売る準備に取り掛かるのが理想だが、相続時まで売れずに残ることもある。取りあえず相続した場合でも、引き続き売る努力をし、早めに処分するのが得策だ。「相続税の申告期限から3年以内に土地建物を売却すると、支払った相続税の一定金額を土地建物の取得費に加算できる特例が使えます」(中垣さん)。この特例を使うと、土地を売ったときにかかる所得税が軽減できる。極力、期限内に売却し、節税に役立てよう。
■相続をしない選択も
親の持つ不動産に多額のローンが残っているケースもある。どうしても引き継ぎたくなければ、相続自体を放棄する「相続放棄」か、一部の資産のみを相続する「限定承認」という選択も可能だ(下の図参照)。
この場合、相続放棄・限定承認ともに相続があった(親の死亡時)ことを知った日から3カ月以内の手続きが必要。この期間に手続きを怠ると、自動的に通常の相続の「単純承認」をすることになる。
思わぬ不良資産を継がないためにも、親の資産は事前に把握し、早めに準備しておこう。
今回の取材は、この人たちに聞きました↓
中垣光博さん(税理士法人あすな 税理士)、新村貢一さん(にいむら会計事務所 税理士)、土田義二さん(土田会計事務所 税理士)
(日経マネー編集部)
日経ビジネス×日経マネームック『相続金持ちVS相続貧乏』の記事を基に再構成

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